公表論文の整理によれば、医療経済評価(ICERやINB)は本質的に「効率性」の指標であり、次の2種類に区分される。

・ 生産の効率性:同じ健康改善をより安く生み出すこと

・ 配分の効率性:社会厚生(social welfare)を改善するような資源配分

いずれも公平・公正といった価値判断そのものを指標化するものではない――これが「経済学分野のクセ」であると同時に、QALYやICERに対する批判の根本にある。社会厚生を SW(Ua, Ub) と表すとき、最も単純なベンサム型(SW = Ua + Ub、単純功利主義)では、Aさんの健康状態が元々悪くても、同じ健康改善が社会厚生に与える影響はBさんと等しくなる。

この問題に対する経済学からの応答として、主に2つのアプローチがある。

・ ① 個人の効用関数の仮定を変える → GRACEはその代表例

・ ② 社会厚生関数の形を変える → DCEAはその代表例

①は社会厚生関数を経由しない分、より普遍的(米国的発想)とみなされる一方、②は明示的に社会厚生関数を用いるため、これを好まない立場からは「踏み込みすぎ」との見方もある(欧州的発想)。

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